Feedback Sheet 「コンクリートのヒビ割れ」
現象
コンクリートで綺麗に仕上げた床にヒビが入る。
同じく、割れてしまう。
対策
*コンクリート工事では、「構造体で使うコンクリート」と、「仕上げで使う
コンクリート」があり扱い方は非常に異なります。
ここでは、弊社がよく施工する、「仕上げで使うコンクリート」を説明します。
● 原因 1 <コンクリートのなかに鉄筋が入っていない。>
この世の中で、コンクリートだけで成り立っている床や壁というものは
存在しません。
必ず、コンクリートのなかに「鉄筋」が入っています。
(ダム湖の擁壁や橋梁の基礎などは別ですが・・・)
コンクリートは圧縮力を補い、鉄筋は引っ張り力や曲げ力を補い、床
や壁が成立するのです。
したがって、呼び方として正しいのは「鉄筋コンクリート」と言います。
この重要な鉄筋がコンクリートのなかに正しく入っていないと割れます。
(建物の構造体で無筋コンクリートなどの施工は手抜き工事どころでは
許されません。)
○ 対策
必ず鉄筋が入っているかどうかを確認します。
また、入っていれば良いと言う訳ではなく、どのようなサイズのものがどの
位置に入っているかも重要です。
<写真1>は、住宅の庭をコンクリート仕上げにする工事ですが、ここで
の鉄筋は「ワイヤーメッシュ」を使用しています。
このワイヤーメッシュも地べたに、くっついていてはまったく意味がありませ
ん。
理想は、コンクリートの仕上げ面から30㎜ほど中に入っている状態です。
現場ではどうするのか?
答えは「手で引っ張って、浮かせる!」です。 → <写真4>を参照
この作業が本当にとっても重要なのです。
*車庫などの床で、車など重量物が乗る場合は、ワイヤーメッシュではな
く、異型鉄筋(直径6㎜~10㎜)を井桁状に入れる場合があります。
● 原因 2 <コンクリートに水分が多すぎる>
コンクリートは、<写真2>のような車(ミキサー車)で現場まで運んで
きます。
その状態は「生コンクリート」といって、ドロドロした状態です。
このドロドロが、シャバシャバと水分が多いと、生コンが乾燥した際に割れ
が酷くなります。
○ 対策
生コンクリートの水分のことを「水セメント比」と言います。
柔らかい状態ですと、現場で平らにならすのが楽で職人は喜びます。
硬い状態ですと、その逆です。
したがって、将来の「割れ」のことなど考えていない職人はシャバシャバの
生コンクリートを使います。
(構造体で使う生コンクリートでは、水セメント比が厳格に指定されており、
それを違反することはあってはならないことです。)
ただし、夏場と冬場では、生コンクリートが乾燥する時間が大幅に違うの
で、生コンクリートの水分は夏場の方が多くなります。
● 原因 3 <誘発目地が無い>
極論を言わせていただくと、上記の対策をしっかりと施工したからと言っ
て、割れないコンクリートは存在しません。
ドロドロと水分の多い状態から水分が乾燥して、カチカチに固まる過程で
目に見えるクラック、見えないクラック含めて必ず発生します。
「ヘアークラック」と言って髪の毛ぐらいの太さのクラックは許容範囲内で
しょう。
○ 対策
しかし、ヘアークラックが多くなりすぎると、大きなクラックが発生します。
そこで、「ここで割れてくださいよ!」とクラックを誘いこむのが「誘発目地」
です。
<写真7>では、その誘発目地が確認できます。
<写真7>のような、生コンクリートを打う前に、あらかじめ設置しておく
方法と、生コンクリートが固まってから、後から電動工具でコンクリートに
溝を入れ(カットする)方法があります。
ガソリンスタンドの床などはコンクリートでできていますが、よく見ると必
ず誘発目地が入っていますね。
*ただし、床面積が小さい場合は、誘発目地は入れません。
私の経験では、概ね床面積が正方形の大きさで、1辺が3m以上の際に
入れます。
●○写真8の解説
先に説明したとおり、コンクリートは「仕上げで使うコンクリート」と、「構造
体で使うコンクリート」はまったく扱い方が別です。
構造体で使うコンクリートでは予め様々な成分や配合、数値が決められて
います。
それら数値が本当に現場で使われているのかどうかを現場で確認します。
この写真はその構造体を施工した際の現場確認(試験)写真です。
代表的な以下4つの確認をします。
① 空気量 (写真右)
工場で生コンを煉る段階で微量な気泡が入ります。乱雑に煉って生コン
のなかに大きな気泡が沢山入っていたら強度に影響します。
ワシントン型エアーメーターと言うのを使って、メターの針を読み取り確認し
ます。
② 柔らかさ (写真中央)
スランプ試験と言います。
底の無い鉄製の筒に、生コンを詰めてから上にそっと引き抜きます。
そうすると、写真のようにグシャっという広がった感じになります。
筒の上から何cm下がったのか?これがスランプ試験です。
一般的には15cmから18cmで、下がった量の多い18cmの方が柔ら
かいコンクリートとなります。
③ 塩分試験 (写真中央)
スランプ試験で使った「グシャ」っとなっている生コンに、昔に理科の実
験で使ったリトマス試験紙みたいな札(カンタブと言う)を刺して、塩分が
多くないかどうかを試験します。
塩分が多いとコンクリートの中に入っている鉄筋がサビて構造的なダメ
ージが非常に大きくなります。
その昔、山陽新幹線のトンネル内のコンクリート剥落事故が相次ぎま
したが、この塩分の原因がほとんどで、何と、生コンの中に海の砂を使っ
ていたそうです!
④ 強度の試験 (写真左)
コンクリートには設計基準強度が指定されている訳ですが、この生コン
は本当にその強度があるのか?を試験します。
用意した筒に現場で生コンを採取し、慎重に検査工場まで持ち帰ります。
生コンは打設後、4週間後(28日)に最大強度を発揮します。
その時期に、機械を使って設計基準強度以上の力をかけて、筒状のコン
クリートを割ります。
そして何キロで割れたかを確認します。
当然、設計基準強度以上で割れなくてはなりません。
万が一、設計基準強度を下回って割れてしまったら、現場を壊してやり直
しとなり、想像もしたくない事態になります。
コンクリート工事では、専門的な知識と、しっかりとした施工、経験がとても重要です。施工においては工事店がしっかりしていても、現場の末端の職人までしっかりとしていなとなりません。コンクリートは打設してしまえば、中がどうなっていたかは分からなくなってしまいます。相見積りをとり、ただ工事費が安いからといって飛びつくのは大変危険です。信頼のおける工事店を選定してください。
<写真1>コンクリートを打ち込む前に、鉄筋(ワイヤーメッシュ)を敷き込んだ状態です。
<写真2>ミキサー車で生コンクリートが現場まで運ばれてきた様子です。肌艶が良い生コンであることを確認します!
<写真3>生コンクリートを打設している最中です。
<写真4>鉄筋(ワイヤーメッシュ)を正しい位置に動かしている写真です。この作業がとても重要!!!
<写真5>金コテで押さえている写真です。金コテ押さえ仕上げは実は非常に手間がかかります。この作業を3回繰り返し、綺麗な平滑な面ができるのです。
<写真6>金コテ押さえが完成した写真です。綺麗にできました。
<写真7>別の某現場の写真です。誘発目地とワイヤーメッシュが見えます。
<写真8>某現場の生コンクリートの受け入れ検査の写真です。